【現地レポート】HR Tech Conference & EXPO in Las Vegas, 2022 - 株式会社Every

HR Tech Conference & EXPO in Las Vegas 2022

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【世界最大のHR Techイベント】HR Technology Conference & EXPOは、2年ぶりの開催であった2021年に続き、2年連続の開催となりました。

このカンファレンスでは、HR Tech領域ベンダーが出展するエクスポ(ブース出展)に加えて、人事領域の専門家の講演、スタートアップのピッチイベントpitch(ベンチャー企業のプレゼン大会)等が行われています。

本ページでは、Every代表の松澤がこのイベントに参加した模様をご紹介致します。グローバルでは何が起きているのか、どんなテクノロジーが人事領域に活用されているのか、そして私たちは何をしたらよいのか、少しずつお伝えしてまいります。


【Day0】“From The Great Resignation to The Great Reset"

(ザ・グレート・レジグネーションからザ・グレート・リセットへ)


“The Great Resignation”という言葉をご存じでしょうか?Covid-19の世界的流行によって、アメリカではこの言葉がHR界隈でよく使われるようになりました。この言葉は、過去に類を見ない「短期間での大量離職」を意味しています。詳細は昨年のレポートをぜひご覧ください。

 

1年が経ち、どのような変化が起きているか。2022年7月のフォーチューン社の記事によると以下の様なトレンドがあると述べられています。

ここ数年来の離職者の波は衰える気配がなく、自ら進んで辞めることを選択した多くの人にとって、理想のキャリアの大改革が進行中である。今、仕事を辞めようと考えている従業員の数は約40%で、この数字はここ数カ月あまり変わっていない。3月にマイクロソフトが行った調査では、41%の労働者が退職を考えており、先週行われたマッキンゼーの別の調査では、この数字は40%になった。」(引用元:「Great Resignation shows no signs of slowing down: 40% of U.S. workers are considering quitting their jobs—here’s where they’re going」)

 

実際に、2022年7月の米国労働統計局のレポートによると、雇用数は640万人、一方でレイオフなども傾向は変わらず140 万人と大きな変化はないようです。つまり、労働力の不足があるのと同時にレイオフが進んでいる状態が続いており、人材そのものではなく、「能力」の不足が生じている事が言えます。これらはビジネスモデルの変革に伴い、仕事のリデザイン、並びに職場そのものの再構築が進んでいることが背景にあると言えるのではないでしょうか。 

 

では最後に、従業員側の価値観にはどんな変化が生じているか。このHR Techカンファレンス主催者でHRコラムニストのSteve Boese「The Great Reset leading to new workplace expectations(ザ・グレート・リセットが新しい職場環境に対する期待を先導している)」と述べます。Quiet Quittingと呼ばれるような企業へのロイヤルティの低下、リモートワークの普及、オンライン主体となるコミュニケーションによるチームワークの難しさ、健康や安全に対する意識の高まりなどなど。さらにBlack Lives MattersやAsian Hateなどアメリカ特有の社会的な動きに加えて、ミレニアル・GenZと呼ばれる新しい世代がWorkforceの中心となる事も、今後のHRの活動に大いに関わってくるという事を視野に入れておく必要があります。

 

以下の内容では、キースピーカーの講演や会場の様子など、私自身の気づきなどを共有させて頂きますので、皆様に雰囲気だけでも楽しんで頂き、少しでも気づきのある内容にしていければと思います。


【Day1】 エンゲージメントサービス、タレント&パフォーマンス&ラーニングマネジメントの出展企業が大幅に増加

【Day1】 "2022年の出展トレンド"

気づき・ポイント


  • ここでは、2022年のHR Tech Conferenceの出展企業を纏めてみました。(※弊社独自基準でのカテゴライズ)。昨年度との違いから直接的な会話に対する許容範囲の変化、領域別の変化に伴いHRニーズの変化が予測できます。
  • 特に、エンゲージメント領域の出展企業が昨年度比較で800%強の増加大量離職に伴うリテンションへの関心が急速に高まっている事が予測されます。また、大量離職が招く労働力の不足に対して、各種マネジメントシステムにおいても同様にニーズが強まっており(昨年度比較500%程度)、リスキルなどのタレントの活用に関するニーズの高まりも同時に考えられます。
  • そして、数字上は埋もれがちではありますが、ウェルネスやウェルビーイングに関しても昨年度比較350%で出展企業は増加しており、従業員の精神的・肉体的健康支援に関する問題意識の高まりを感じました。個別具体のサービスや講演に関しては、別途ご紹介したいと思います。

<2022年度エキスポ出展社 合計> 

428社
(内 スタートアップ・パビリオン参加社 58社)

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<主な分野>
AI・機械学習 60社
リクルートメント 125社
ワークフォースプラニング・アナリティクス 70社
ウェルネス&ウェルビーイング 49社
Engagement/recognition 83社
パフォーマンス・マネジメント 47社
Talent management / Succession 114社
Learning management system 41社

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<国別参加社 内訳>
アメリカ 385社(内 カリフォルニア 102社)
アイルランド 2社
イギリス 8社
イスラエル 2社
インド 2社
オーストラリア 2社
オランダ 1社
カナダ 13社
キプロス 1社
シンガポール 1社
ジョージア 1社
ドイツ 2社
トルコ 2社
ニュージーランド 1社
フィンランド 1社
ポーランド 3社
南アフリカ 1社

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【Day1】ジェンダーギャップの解消には132年かかる?

【Day1】Women in Tech(テクノロジーと女性)

気づき・ポイント


  • Opening Session | Employee Expectations in the New World of Work
    • 登壇者:Danielle Kirgan, EVP, Chief Transformation and Human Resources Officer, Macy's
    • 登壇者:Natalie McCullough, President and Chief Commercial Officer, Guild Education
    • 創業150年超の老舗百貨店メイシーズは全米で総従業員数9万人、うち7万人が店頭販売員。女性の昇進促進と離職率削減を目指すため、エンゲージメント・L&D施策としてGuildと提携し教育プログラムを開始。資格取得から大学学位まで、118プログラムを無償で提供。参加した従業員の過半数が有色人種女性。
    • 対談中、マネジメントから見たワークフォースを一貫して「従業員(employee)」ではなく「colleague(同僚・仲間)」と呼んでいたのが印象的。他のセッションでも言及されていた、People-centricな姿勢が根底にある。
    • “Meeting where employees are at” – 相手が今置かれている状況を理解し、それに寄り添うことが不可欠。
  • Diversity Recruiting: Opportunities and Challenges (HRCI + Veritone + Aptitude)
    • 登壇者:Denise Caleb, President of HRSI, HRCI
    • 登壇者:Julie Harding, SVP, People Operations, Veritone
    • 登壇者:Madeline Laurano, Founder, Aptitude Research
    • 世界経済フォーラムのジェンダーギャップレポートによると、今のペースのままではジェンダーギャップを無くすのに132年(2022年時)もかかるという。では、どう軌道修正すべきか?
    • 組織のDEI促進には、未解決の問題をもオープンにする「誠実さ」と「透明性」が必須
    • そもそも、なぜDEIが重要か?顧客や従業員が多様だから。違いを強みにしていくために、リーダーシップも多様な視点を持つ/に気付くことが必要。性別や人種だけでなく、障害の有無や経歴の違いなど、汲み取るべき属性・要素は様々。
    • Employee Resource Group (ERG) – いわゆる、(主にマイノリティ当事者の)サークルのようなもの。やみくもに設立・運営するのでなく、systemization, governance, structure(システム、ガバナンス、構造)を考慮すべし
  • The Remote Employee Engagement Crisis. What Can Employers Do?
    • 登壇者:Casey Bailey, Head of People, Deel
    • 登壇者:Dave Carhart, VP, Advisory Services.Lattice
    • 登壇者:Deborah Hanus, CEO, Sparrow
    • WFH(Work from Home) の状況
      • 67%がWFHしており、34%の社員がエンゲージメント高く、16%はエンゲージメントが下がっている。更に34%の社員は副業をしている。 
    • なぜエンゲージメントが下がっているのか?
      • 組織文化を感じる機会や帰属意識の低下
      • “意図的”に人に合わなくてはいけない環境
    • オンボーディング時点から明確な期待値を設定する
      • ハイブリッド?WFH? チームの規則や嗜好は?
      • どの様に働く/働かないべきかを予め共有する
    • 大きなマイルストーンを設定する
      • ストーリーテリングによって、明確な絵を説明する
      • 進捗の感覚をもたらす
      • フィードバックの良い文化
    • マネージャーがすべきこと
      • 肉体的心理的安全な文化を形成する
      • オープンでありのままでいる 
      • 声のトーンを調整し会話を円滑にする
  • HR Tech Talk | Driving Engagement and Retention: Virtual Reality and its Impact on Workplace Culture
  • 登壇者:Gitta Barry, EVP and General Manager, REAL System, Penumbra, Inc.
  • VRを用いたハラスメント・差別防止研修を開発・提供。実写映像のシナリオに沿い、年齢差別、セクハラ、SOGIハラなどの問題発言・行動や対処をRPG感覚で学べる。従来の受け身な研修とは異なり、没入体験型なためエンゲージメントや内容の理解・習熟度が飛躍的にアップするという。
  • ウェルネス関連も含め、コンテンツは100種類、合計256時間に及ぶ。
  • 元々、重症患者や高齢者の医療的ケア・リハビリに特化していたプロダクトなため、他社に比べてUXが高いのも特徴。装置はヘッドセットのみでコントローラー要らず、VR酔いにも配慮。

【Day1 Final】Going ALL IN: Breaking Down Barriers to Transform Culture(全てをかける。組織変革のためのバリアの壊し方)

気づき・ポイント

  • Opening Keynote | Going ALL IN: Breaking Down Barriers to Transform Culture(全てをかける。組織変革のためのバリアの壊し方)
    • 登壇者:Cynthia Marshall, CEO of the Dallas Mavericks, became the first Black female CEO in the National Basketball Association.
    • 全米初黒人女性でNBAプロフェッショナルチームのCEO女性。カリフォルニアリッチモンド出身(比較的、貧困層が多く犯罪率も高いハードシップの高いエリア)の黒人女性が、UC Berkeleyを卒業し、36年務めたAT&Tの最高ダイバーシティ責任者兼・人事担当上級副社長からアメリカ初、黒人女性NBAチームのCEOになるまでの軌跡をたどったプレゼンテーション。AT&T時代に行ったヘルスケア施策(健康診断の実施)で自らがリーダーシップを取った際に癌が発覚。癌との闘病生活もサバイブした。
    • 彼女は、AT&Tにおける世界クラスのインクルージョン・ダイバーシティ文化の創造において主導的な役割を果たし、Diversity Incの2017年トップ50企業リストのトップ3に同社を位置づけ、その他にも2017年「ビジネス界で最も影響力のある女性25人」の一人に選ばれる。同年、シンシア・マーシャルは、ATHENA®リーダーシップ・プログラム賞を受賞。さらに、「アメリカ企業で最もパワフルな女性50人」の一人に。他にもTexas Women's FoundationやDallas Regional Chamberなど、多くの非営利団体の役員を務めている。
    • “Education matters, ZIp Code doesn’t(生まれる場所が重要でない、教育が重要である)”.自分の出生地の話、家族のDVの話、経済状況的なビハインドがありながらも周囲の助けを借りてUC Berkelyへ入学し、AT&Tへ入社。
    • 36年間のAT&T(日本でいう大手携帯キャリア会社)の経験からの学びから彼女は以下の様に動く事を重視している。
      • Take a Risk
      • Try something different
      • Conspire and contribute
      • Love the people
      • Do the right things
      • When it’s over, stop
      • Pay attention to all of it
      • Transfer your skills
      • Prepare
      • Accept diversity
      • Never give up
      • Protect the brand
      • Be grateful
      • Show up, Work hard
      • Make a difference
    • Leading with Heart=Intent, Inclusion, Insight, Inspiration(心で導く)。人事は時に定量的な意思決定が求められるが、常に人間的な動機を忘れない事が重要である。Intent(意図)として、ミッションとバリューを具体的に言語化することが重要である。
    • DEIの考え方として重要なのは、「All in(全てを考慮する事)」である。性別のみでなく、国籍や肌の色、宗教、出生国、性的志向、性格、文化、働き方、人口統計学的多様性のみならず認知機的多様性や生活スタイル、その他さまざまな要員全てにアプローチしてなくはならないということ。
    • 「Diversity is being invited to the party, Inclusion is being asked to dance(ダイバーシティとはパーティに招待されることだが、インクルージョンは一緒に踊ろうと誘われる事である)」
    • Equality and Equityの違いと夫々に対して、HRとしてどの様な解釈を持つかが重要である。マイノリティが自らEqualityの状態を選べるような階段をつくること(エンパワーする事)やフェンスそのものを取っ払う事が重要だ。
    • Are you all in?(全てをかけていますか?)

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HR Tech Conferenceは4日間開催されており、Day2以降のレポートも今後公開しております。
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