【世界最大のHR Techイベント】HR Technology Conference & EXPOは、2年ぶりの開催であった2021年に続き、2年連続の開催となりました。 このカンファレンスでは、HR Tech領域ベンダーが出展するエクスポ(ブース出展)に加えて、人事領域の専門家の講演、スタートアップのピッチイベントpitch(ベンチャー企業のプレゼン大会)等が行われています。 本ページでは、Every代表の松澤がこのイベントに参加した模様をご紹介致します。グローバルでは何が起きているのか、どんなテクノロジーが人事領域に活用されているのか、そして私たちは何をしたらよいのか、少しずつお伝えしてまいります。
【Day0 序章】“The Great Resignation to The Great Reset(ザ・グレート・レジグネーションからザ・グレート・リセットへ)” 【Day1 まとめ】 エンゲージメントサービス、タレント&パフォーマンス&ラーニングマネジメントの出展企業が大幅に増加 【Day1 Keytopic(DEI)】ジェンダーギャップの解消には132年かかる? 【Day1 Keynote】Going ALL IN: Breaking Down Barriers to Transform Culture(全てをかける。組織変革のためのバリアの壊し方) 【Day2 Keynote】 What’s New and What’s Ahead in the HR Tech Market(HRTechトレンドと今後) 【Day3 まとめ】Defined Outcomes(明確な結果)に拘るHR機能がHRの認知を変えていく
“The Great Resignation”という言葉をご存じでしょうか?Covid-19の世界的流行によって、アメリカではこの言葉がHR界隈でよく使われるようになりました。この言葉は、過去に類を見ない「短期間での大量離職」を意味しています。(詳細は昨年のレポートをぜひご覧ください。) 1年が経ち、どのような変化が起きているか。2022年7月のフォーチューン社の記事によると以下の様なトレンドがあると述べられています。 「ここ数年来の離職者の波は衰える気配がなく、自ら進んで辞めることを選択した多くの人にとって、理想のキャリアの大改革が進行中である。今、仕事を辞めようと考えている従業員の数は約40%で、この数字はここ数カ月あまり変わっていない。3月にマイクロソフトが行った調査では、41%の労働者が退職を考えており、先週行われたマッキンゼーの別の調査では、この数字は40%になった。」(引用元:「Great Resignation shows no signs of slowing down: 40% of U.S. workers are considering quitting their jobs—here’s where they’re going」) 実際に、2022年7月の米国労働統計局のレポートによると、雇用数は640万人、一方でレイオフなども傾向は変わらず140 万人と大きな変化はないようです。つまり、労働力の不足があるのと同時にレイオフが進んでいる状態が続いており、人材そのものではなく、「能力」の不足が生じている事が言えます。これらはビジネスモデルの変革に伴い、仕事のリデザイン、並びに職場そのものの再構築が進んでいることが背景にあると言えるのではないでしょうか。 では最後に、従業員側の価値観にはどんな変化が生じているか。このHR Techカンファレンス主催者でHRコラムニストのSteve Boeseは「The Great Reset leading to new workplace expectations(ザ・グレート・リセットが新しい職場環境に対する期待を先導している)」と述べます。Quiet Quittingと呼ばれるような企業へのロイヤルティの低下、リモートワークの普及、オンライン主体となるコミュニケーションによるチームワークの難しさ、健康や安全に対する意識の高まりなどなど。さらにBlack Lives MattersやAsian Hateなどアメリカ特有の社会的な動きに加えて、ミレニアル・GenZと呼ばれる新しい世代がWorkforceの中心となる事も、今後のHRの活動に大いに関わってくるという事を視野に入れておく必要があります。 以下の内容では、キースピーカーの講演や会場の様子など、私自身の気づきなどを共有させて頂きますので、皆様に雰囲気だけでも楽しんで頂き、少しでも気づきのある内容にしていければと思います。
<2022年度エキスポ出展社 合計> 428社 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー <主な分野> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー <国別参加社 内訳> ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【参加したセッション】 ・Business Imperative of DEI&B ・Mega Session | Exceeding Employee Expectations in the New World of Work ・Enabling Organizational Change Management with Conversational AI ・Making Business Decisions with HR Analytics and Reporting ・Workhuman Demo | Reinvigorating DE&I Through Your Return to Workplace Strategy
DEI(Diversity, Equity & Inclusion)のセッションを中心に参加。昨年は数件であったDEI浸透促進のためのプラットフォームもさらに進化し、機械学習やNLP(自然言語処理)の力を駆使した「提案型アプリケーション」が開発されていた。後述のWorkhumanはNLP(自然言語処理)の技術を使い、例えば以下の様な文章に対してアラーを出してくれる。
HR Tech投資に関する権威であるJosh Bershinのプレゼンテーション。「The Disruption Never Stops: What’s New and What’s Ahead in the HR Tech Market(破壊は止まらない。HRテック市場の新情報と今後の展望)」というタイトルの通り、不安定な労働市場においてテクノロジーが更に変化していくトレンドを学べるプレゼンテーション。 コロナ下で起きた現象(①Microsoft Teamsが急普及し働き方が一気にデジタル化された、②Reskillの必要性が高まりオンライン学習プラットフォームが急成長した、③仕事そのものがポジションベースからプロジェクト・作業単位に変化していった、等)に大きな変化はなく、その延長線上で物事が動いていると言える。日本でも仕事の定義を明確にする動き(JDの作成など)が進んでいる中で、比較的、夫々の仕事の境界線を明確にするアメリカ内でも更にその動きは進んでいくようだ。現在やっている仕事の棚卸から必要な能力を言語化していく積立型のプロセス以上に、「必要な成果を生み出すために必要な能力の可視化」という逆算型プロセスがさらに加速すると予測している。 そのようなマーケットにおいて、カギとなるのは「Productivity(生産性)」であり、要は生産性が高まるのであればもっと自由に働ける環境にしようじゃないか!という機運が働き、私たちの活動を「効率的・効果的」にするツールが増えるだろうとのことだった。 その為のキーコンセプトが「インテリジェンス」であり、様々な定義があったがシンプルな言葉で纏めると「使いやすくて、簡単で、楽な」サポートシステムが求められ続けるだろう、とのこと。HCM(Human Capital Management)システムしかり、採用ツールしかり、育成ツールしかり。多くのAI技術が透過されることがもはや当たり前で、エビデンスデータに基づく提案行為が散らばるようなツールになるのだろう。一方、私たちは利便性を優先するがあまり、良い発見のために迷ったり回り道をしたり、考える、という作業をしなくなるのではないか、という危惧も同時に浮かんだプレゼンテーションだった。 以下、スピーチタイトル ———————————————————— 詳細はこちらをご覧ください
【参加したセッション】
登壇者:Stacey Harris, Chief Research Officer & Managing Partner, Sapient Insights Group 25年間の調査結果比較からHRやそのテクノロジーに対してどのような変化が起きているかを、Sapient Insights Groupのチーフ・リサーチ・オフィサーがプレゼンテーション。 登壇者:Tony DiRomualdo, Senior Research Director, The Hackett Group 登壇者:Franco Girimonte, Associate Principal, NA HR Advisory Practice Leader, The Hackett Group 1991年に設立され、2008年に社名変更をしたハケット・グループ(NASDAQ: HCKT)は、知的財産をベースにした戦略コンサルティングと企業ベンチマーキングをグローバル企業に提供し、Digital World Class™パフォーマンスを可能にする主要な企業向けクラウドアプリケーションの導入、ワークフローの自動化、分析を含むデジタル変革を提案している。 The Hackett Group は、米国、欧州、アジア太平洋地域にグローバル拠点を持ち、グローバルでのシステム導入・統合経験を持つコンサルタントがそのポイントをプレゼンテーション。
Translatorは、世界で最も先進的なDiversity, Equity, & Inclusion(DEI)グループトレーニングとデータ分析プラットフォームです。 Translatorは、最先端のSafeSpace™テクノロジーと世界トップクラスのコンテンツ、そして人を主体とした会話を組み合わせることで、より多様で包括的な文化を創造することができます。従業員のエンゲージメントと定着率の向上、多様な人材紹介の増加、環境社会ガバナンス(ESG)コンプライアンスへなどの適応が可能です。 引用元:https://www.translator.company/
SPOTLYFEは、人々が一時停止する習慣をつけることで、自分が望む人生とそこに到達する方法について意図的に考えることができるようにします。目標設定にありがちな、将来の大きな結果に焦点を当てるのではなく、意図的な設定によって、人々がどのように人生を経験したいか、その瞬間に現れ、目的地と同じくらい楽しい旅になるよう、目的意識を持つことができるのです。 引用元:https://www.spotlyfe.com/solutions/
Praisidioが依拠する情報は公開されており、既に組織内に存在しています。私たちのプラットフォームは、仕事量、人間関係、能力開発、昇進履歴、報酬、評価などのメタデータを分析し、SOC II認証の計算ワークフローを通じて、燃え尽き症候群、停滞、その他のリスクの傾向をリアルタイムに予測します。すべての情報は、企業のコミュニケーション、開発、ビジネスシステムから提供されます。 引用元:https://www.praisidio.com/
Illoominusは、Diversity, Equity, and Inclusion (DE+I)およびHRのリーダーが、職場の多様性へのコミットメントを管理し、多様な社員をリーダーとして育成できるよう支援します。 Illoominusは、リーダーが組織のDE+I戦略を活性化し、管理できるように設計されたデータ分析プラットフォームです。 Illoominusは、既存のソフトウェア・ツールのインクルージョン・データを一元化し、自動化されたレポートによって効率を高め、人事チームが他のリソースを必要とせずに洞察を得ることができるようにします。 引用元:https://www.illoominus.com/
JobSyncの人材獲得自動化プラットフォームは、あなたの組織の人材獲得技術スタックのための接続と自動化のハブです。 JobSyncはIndeed、ZipRecruiter、キャリアサイトなどの既存の求人サイトをATSに直接つなげます。求職者は統合されたフルアプリケーションで職種特有の質問に答え、JobSyncはATSで採用担当者に直接求職者を送り、ATSが処理できない手動採用タスクを自動化します。 引用元:https://www.jobsync.com/
ModernLoopは、チームのカレンダーを同期し、面接官の空き時間、タイムゾーン、勤務時間、面接の負荷などに基づいて面接官を比較し、数千の選択肢の中から最適なものをわずか数秒で絞り込み、次の候補者面接のための最適なスケジュールを構築します。 メール、カレンダー、Slack、Zoom、Google Meets、応募者追跡システムなどと連携し、求職者に最高の体験を提供し、チーム内で採用活動を行うためのベストプラクティスを提供します。 引用元:https://www.modernloop.io/?
今回のHR Tech Conference in 2022に参加し、 ①Great Resignation(大量離職) COVID-19の影響を受け、米国の労働市場は「Great Resignation(大量離職)」と呼ばれる類を見ない「離職」が発生しました。 この現象は今もなお続いているわけですが、その中身には変化があり「②Quiet Quitting(静かなる終了)」と呼ばれる、「自分の役割を超えて仕事をしようとは思わないが、やめようとも思っていない社員が増える」という新しい現象がトレンド化しています。 ここ数年VUCAやテクノロジーの進化により、従業員の肉体的負荷・精神的負荷の高まりは問題視され、労働市場の変化(Z世代の参入)により働き方の価値観も変化し続けています。 そのような変化とCOVID-19が複雑に混ざり合い、過去の働き方を今一度見直し、「③Great Reset(働き方の再構築)」を期待する従業員が増えているという事が米国エリアでのトレンドでしょう。 そこで、「④Work from Home(在宅勤務)」も含めた「⑤Hybrid work rules(ハイブリッドワークのルール)」は、大きなトピックスの一つとなり続けます。 オフィスをどのように使うのか、その目的や意義の再構築も重要な時代になっています。これらに対するアプローチはまさに誰も経験したことのない、新たなイシューであることから、トライアンドエラーな取り組みが増えるのだと思いますが、 今回のカンファレンスではエンゲージメントサービスが一つのトレンドであったわけですが、私個人としてそこに深いトレンドを感じたわけではなく、「離職→対策としてエンゲージメントケア」という短絡的な思考であるように感じます。 カンファレンス内で言及されていた「⑦School Shooting/Black lives matter(学校での銃撃事件/ブラックライブスマター)」のような社会的イシューも「③Great Reset(働き方の再構築)」には影響し続けており、改めてHRが社会的事象や従業員の個別課題を理解し解決していくスタンスが求めらるのではないでしょうか。 ※1…エンゲージしている社員と会社に不満を持ち退職をする社員の中間にいる、「自分の役割以上のことをしようとは思わないが、辞めようとも思っていない従業員」の事を指す
HR Tech Conference & EXPO in Las Vegas 2022
目次
【Day0】“From The Great Resignation to The Great Reset"
(ザ・グレート・レジグネーションからザ・グレート・リセットへ)
【Day1】 エンゲージメントサービス、タレント&パフォーマンス&ラーニングマネジメントの出展企業が大幅に増加
【Day1】 "2022年の出展トレンド"
気づき・ポイント
(内 スタートアップ・パビリオン参加社 58社)
AI・機械学習 60社
リクルートメント 125社
ワークフォースプラニング・アナリティクス 70社
ウェルネス&ウェルビーイング 49社
Engagement/recognition 83社
パフォーマンス・マネジメント 47社
Talent management / Succession 114社
Learning management system 41社
アメリカ 385社(内 カリフォルニア 102社)
アイルランド 2社
イギリス 8社
イスラエル 2社
インド 2社
オーストラリア 2社
オランダ 1社
カナダ 13社
キプロス 1社
シンガポール 1社
ジョージア 1社
ドイツ 2社
トルコ 2社
ニュージーランド 1社
フィンランド 1社
ポーランド 3社
南アフリカ 1社【Day1】ジェンダーギャップの解消には132年かかる?
【Day1】Women in Tech(テクノロジーと女性)
気づき・ポイント
【Day1 Final】Going ALL IN: Breaking Down Barriers to Transform Culture(全てをかける。組織変革のためのバリアの壊し方)
気づき・ポイント
【Day2まとめ】進化するDEIアプリケーション
気づき・ポイント
「Great Job!! You are the role model for all women!! (素晴らしい!あなたは全ての女性従業員のロールモデルだ!)」の問題は?
【Day2 Keynote Speaker】 The Disruption Never Stops: What’s New and What’s Ahead in the HR Tech Market(破壊は止まらない。HRテック市場の新情報と今後の展望)
Josh Bersin, Global Industry Analyst and CEO, The Josh Bersin Company
気づき・ポイント
【Day3まとめ】Defined Outcomes(明確な結果)に拘るHR機能がHRの認知を変えていく
気づき・ポイント
HR Tech EXCLUSIVE | The Public Debut of the 25th Annual Sapient Insights HR Systems Survey Key Findings
Mega Session | Taking Control of Your HR Technology Architecture
【Day3 Startup Pitchfest】 Final Round
ピッチファイナリストをご紹介!
完全に自動化された統合機能により、求職者と採用担当者のためにカスタマイズされた体験を提供し、バラバラになった人材獲得エコシステムを接続、強化、自動化、最適化することができます。【総括HR Tech in 2022】現在地と今後
大きなトレンドとしてつかんでおくべきキーワードは、以下の7点だと感じました。
②Quiet Quitting(静かなる終了)※1
③Great Reset(働き方の再構築)
④Work from Home(在宅勤務)
⑤Hybrid work rules(ハイブリッドワークのルール)
⑥Burn Out(燃え尽き症候群)
⑦School Shooting/Black lives matter(学校での銃撃事件/ブラックライブスマター)
オフィスでのSocial Connectionが生まれない環境下では「⑥Burn Out(燃え尽き症候群)」は一つの顕在的イシューとして残り続けるでしょうし、
数年間のトレンドとして「③Great Reset(働き方の再構築)」は残り続けるでしょう。